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ドバイでお店を出店・契約する場合の注意点や流れ、費用について【ドバイにお店を出した体験談】

ドバイ飲食店出店


❶ ドバイで店舗物件の契約の流れ

❷ アルコールライセンスの取得の流れや費用

❸ 店舗契約までにかかる費用の詳細



2024年1月に、私たちはドバイ・マリーナに「La Letizia」を出店し、その後2025年8月に売却を終えました。


弊社はこれまで、日本・ドバイ・フィリピンに店舗を展開し、さらに数多くの日本人や多国籍クライアントのドバイ進出をサポートしてきました。その経験から一言で表すと、ドバイでの出店は「非常に収益性が高いが、その一方で規制が多い」という点に尽きます。

弊社の店舗一覧はこちら

実際に、自社で店舗出店や投資まで行っているエージェントは多くはありません。その意味でも、ここで共有する情報はかなり貴重なものになるはずです。


たとえば、美容室であれば宗教的な理由から男女の施術スペースを分ける必要があり(異性に触れてはならないため)、飲食店であればアルコール提供が許可されるのはホテル物件や一部のフリーゾーンに限定されます。また、公園から一定の距離を保つことが求められるなど、ドバイ特有の細かな規制が数多く存在します。


では実際に、どのようにして物件探しから契約、工事、そして各種許可取得までを進めていくのか。本ブログでは、その全てを具体的に公開していきます。


店舗物件が整うまでの流れ

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ドバイで物件探しが難しい本当の理由


弊社にもよく「ドバイで出店したいので物件探しをお願いしたい」というご相談をいただきます。

しかし、多くの方が誤解しているのが「ドバイに行けば物件が探せる」という考え方です。


結論から言えば、それは不可能に近いのです。その理由は大きく分けて3つあります。



1. 法人がないと相手にされない

ドバイでは、物件を探す段階から不動産エージェントやオーナーから「法人ライセンスを見せてほしい」と必ず求められます。


なぜかというと、ドバイの法人形態には大きく「フリーゾーン法人」と「メインランド法人」があり、どの地域・どの業種で出店できるかがライセンスによって厳しく制限されているからです。


例えば、フリーゾーン法人は基本的にメインランドでは出店できませんし(2025年に一部規制緩和はありましたが依然として難しい)、飲食であれば「飲食ライセンス」など業態に応じたライセンスが必須となります。


このため、法人すら持たない人から問い合わせが来ても、エージェントは真剣に対応しません。実際に試しに問い合わせをしてみれば、ほとんどが無視されるか、形式的な返信しか返ってこないはずです。


さらに、ドバイには日本のような信用情報機関や保証制度が存在しません。そのため、賃貸契約は居住用も商業用も基本「年間一括払い」。審査期間も保証サービスもなく、オーナーの裁量一つで入居の可否が決まります。


「この国籍は嫌だ」「この会社には実績がないから断る」「この業種はモール内で競合と被るからモール規制的に不可」など、オーナーの主観が色濃く反映されるのです。そのため、エージェントは法人情報や実績を精査し、オーナーに事前承認を取った上で内覧を組むのが一般的です。例えばオーナーがイスラム教である場合、アルコールを提供するテナントを自身の物件に入れるのはイスラム教の教えに背くと考えるオーナーもいるのです。


つまり、法人を持たない状態では、物件を見ることすらほぼ不可能だと考えてください。日本のように「個人事業主」扱いで進めることもできません。ドバイでは事業を行う上で必ず法人ライセンスが必要だからです。


2. 商業物件はオンラインにほぼ出てこない

ドバイでは居住用も商業用も物件不足が続いており、完全な「貸し手市場」「売り手市場」です。日本では入居者は“お客様”として扱われますが、ドバイでは物件を持つ側が“神様”のような立場です。


さらに、商業物件は多くがM&A市場で動いています。日本であれば、事業が失敗すれば退去して次のテナントを募集するのが一般的ですが、ドバイでは「事業ごと売却する」のが当たり前です。


買い手にとっては、内装・許認可・ライセンスを一から整えるより、既存事業を買収する方が早く安く済みます。そのため、優良物件はポータルサイトに掲載されず、M&Aを通じて取引されるのです。


実際、弊社MDS FUNDSではこの仕組みを活用し、La Letiziaを約1年で“3倍の価格”まで引き上げて売却しました。内装や業態は後から変えられるため、短期で立て直して売却するというのも、ドバイならではの市場特性です。(実際の動画は:こちら


3. 流動性が高く、時間をかけられない

ドバイの物件は非常に流動性が高く、募集をかければ1ヶ月以内に新しいテナントが決まるのが普通です。


そのため、法人がない状態で物件を探しても、法人設立・銀行口座開設などに数ヶ月かかり、その間に他の人に取られてしまいます。結果として、法人を持たない人はスタートラインにすら立てないのです。


結論

ドバイで物件探しをするには「まず法人設立」が絶対条件です。法人ライセンスなしでは、内覧どころか問い合わせ段階で門前払いとなります。出店の第一歩は「物件探し」ではなく「法人設立」から始める。ここを理解していないと、いくらドバイに足を運んでも前に進めないのです。


ドバイアルコールライセンス


ドバイのアルコールライセンス取得な流れ


1. まずは飲食店の土台づくり

• ドバイ経済観光庁(DET/旧DTCM)およびDubai Economy(通称DED)の“レストラン/カフェ”の営業許可と、ドバイ市(Dubai Municipality)の食品安全関連の要件(Food Code準拠)を取得します。厨房動線や保管設備などの最低基準はFood Codeで確認可能です。 (Dubai Municipality)



2. 物件条件と書類の準備

• 物件は“アルコール提供が認められる区画”であること(すべてのエリアで許可されるわけではありません)。賃貸契約(Ejari登録)と、家主(ランドロード)の「店内でアルコールを提供して良い」というNOC(同意書)を用意します。店舗レイアウト図(バー/ストレージ/防火措置の記載)も求められます。



3. 事業者の“アルコール提供ライセンス(Type C)”を申請

• ドバイ警察(Dubai Police / DPGH)が所管する“オンプレミス(店舗内提供)”向けの酒類ライセンス(一般にType C)を申請します。エンティティ(法人)用のオンライン窓口は「License DXB」(エンティティ申請ページあり)。

• 申請書・必要書類の典型例:

• 貴社のトレードライセンス(飲食業)

• テナンシー契約/Ejari

• 家主NOC(アルコール提供の同意)

• 店舗図面(提供・保管・防火・セキュリティの説明)

• 責任者情報 等。


4. 現地検査(インスペクション)

• 申請後、警察の担当が現地確認を行い、保管設備・提供動線・防火・社員の管理体制などをチェック。発給までの目安は“現地検査後7〜10営業日”程度とされています(実務上は前後します)。



5. 供給(仕入)ルートの設定

• ライセンスが出たら、正規ディストリビューター(MMI / African + Eastern)からの仕入れ枠(クオータ)設定・発注を行います。Quotaは店舗規模や業態により上限が設けられます。



想定費用・期間の目安

• コンサルサイト等では、店舗向けの酒類ライセンス費用を「数万AED/年」と記載する例があります(30,000–50,000 AEDという見積もり例)。実額は立地・規模・申請内容で変動します。

• 2023年1月以降、個人購入ライセンス費や30%アルコール税の取り扱いが緩和されたニュースもあり、周辺コスト環境は変化しています(店舗向けの許認可手順そのものは“別枠”で必要)。



守るべき運用ルール(抜粋)

• 提供は21歳以上、かつ規則に従った営業時間・表示・在庫保管(鍵付きストレージ等)を厳守。違反時は警察への通報義務など、Type Cライセンスには細かな遵守事項と購入クオータ管理が伴います。

• ホテル等での外部委託イベントや販売には別途許可(CID/DETの許可)が必要になるケースがあるため、イベント提供は都度の許可要件を確認。



よくある質問(実務のコツ)

• どこで申請するの?

→ 事業者のオンプレミス提供はDubai Police(DPGH)所管。オンラインは「License DXB(エンティティ)」を起点に案内されています。

• まず何から始める?

→ 物件選定(アルコール許可エリアか)→賃貸契約とEjari→家主NOC→図面整備→飲食店ライセンス→Type C申請、の順がスムーズ。

• 仕入先は?

→ 正規はMMIまたはAfrican + Eastern。購入はライセンスとクオータに紐づきます。

必要でしたら、あなたの予定エリア・物件条件(モスクや学校との距離、モール内か路面か等)に合わせて、提出書類の雛形チェックリストと「License DXB」申請時の入力項目リストを作ってお渡しします。




店舗契約までにかかる費用の詳細


一般的なエージェント手数料相場


年間賃料の1ヶ月分 がもっとも一般的な手数料水準

→ 例:年家賃 1,200,000 AED の場合、100,000 AED がエージェント手数料。


最低額設定 がある場合も多々あり、例えば 5,000〜10,000 AED を下限とすることがあります。例えば年間家賃が低い場合は全くエージェントの収益にならないからです。


大型物件やモール物件 の場合、交渉次第で「固定額」や「賃料の2〜3か月分」で設定されることもあります。これは希少物件だからです。ホテル物件もたまにそのような契約体型になります。


工事内装にかかる費用の詳細


飲食店(カフェ・レストラン)

1平方フィートあたり 1,500〜3,000 AED が目安

→ 100㎡(約1,076 sqft)の店舗なら 160万〜320万 AED 程度

(キッチン設備・排気ダクト・グリーストラップなど必須設備を含む)


美容室・サロン

1平方フィートあたり 800〜1,500 AED 程度

(水回り・シャンプー台・個室パーティションなどが必要)


小売(物販系ショップ)

1平方フィートあたり 500〜1,000 AED 程度

(棚・照明・レジ周りなど比較的シンプル)


オフィス

1平方フィートあたり 300〜800 AED 程度

(パーテーション・天井・床・配線など)


2. ドバイ特有の費用項目

1. Fit-out Deposit(内装保証金)

• モールやビル管理会社に支払うデポジット(通常 50,000〜200,000 AED)

• 工事中の損害補償のためで、工事完了後に返金されます。


2. Fit-out Permit(工事許可申請)

• ドバイ市(Dubai Municipality)やCivil Defense(消防)、DEWA(電気・水道)など複数機関からの許可が必要

• 申請費用だけで 1万〜数万 AED


3. M&E(Mechanical, Electrical, Plumbing)工事

• 空調ダクト、消防スプリンクラー、排気システム、グリーストラップ、ガス配管など

最もコストが膨らむ項目で、飲食店の場合は全体の50%近くを占めることもあります。


4. 消防・セキュリティ対応

• Civil Defense 承認済みの消火器、火災報知機、緊急出口サインなど

• 小規模店でも最低 50,000 AED〜


5. 設計コンサルタント費用

• モールや市の承認を通すために、認可コンサルタントの図面・申請サポートが必須

• 通常 総工費の5〜10%


3. 実際のイメージ(飲食店の場合)

• 物件保証金(Ejari+Fit-out Deposit):200,000 AED

• 設計コンサル+申請費用:150,000 AED

• 厨房・排気・グリーストラップ・消防工事:800,000 AED

• 客席内装・家具・照明・サインボード:500,000 AED

• 設備(冷蔵庫・食洗機・オーブン等):400,000 AED

→ 合計:約2,000,000 AED(約8,800万円)前後



4. 注意点

スケジュール感:承認と工事で最低でも4〜6ヶ月。モール案件だと8ヶ月以上。

家賃発生タイミング:多くの場合、工事中も家賃が発生する(交渉次第で2〜3ヶ月免除あり)。

撤退時コスト:内装を残して撤退する場合は「Key Money(権利金)」として売却可能。逆にスケルトン返しを求められる場合は解体費用が数十万AEDかかる。


 
 
 

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